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あとがき

あれはいつであったか。いのちのことば社直営のバイブルショツプチェーン・オアシス梅田店において、柏木哲夫先生の講演会があった。2013年2月であったと思う。

講演は、ユーモアに富んだ、聴衆を笑わせながら深く納得させる有意義なものであったらしい。「らしい」というのは、補聴器の調子が悪く、残念ながら私には全く聞こえなかったからである。おまけに肌寒く、途中退席しようと思ったが、講師の目の前に座ってしまった私は、忍の一字の一時間であった。

講演終了後すぐに逃げるように帰る私に、立ちはだかるように声をかける長身の紳士がいた。いのちのことば社の長沢さんであった。私が「聞こえない」旨を言って立ち去ろうとすると、腰を曲げて両手をメガフォン状にして、私の耳のそばで名乗ったうえ、『ひと言でいいのです』(吉川直美編著、いのちのことば社)に私の言葉を引用したことについて礼を言われた。私のほうこそお礼を申し上げねばならないのに、急いでいた私は目礼をしただけで失礼した。

その時にいただいた名刺、じつは本書の出版に至るスタートは、このご名刺をいただいたことから始まるのであるが、その経過は、本書に序文を寄せてくださった穂高教会の毛見昇牧師が書いていてくださるであろう。

名刺は持ってはいるが、ほとんど使うことのない牧師生活をしてきた私には、「名刺」というものの威力に改めて感心、よく見かける「名刺交換風景」に納得するものがあった。あの名刺がなかったら、本書は生まれなかったことは間違いない。

生かされている日々も少なくなった私には、思ってもいなかった本書の誕生である。

毛見先生と長沢さんに衷心より感謝いたします。

そして、なによりも長い間変わりなく読んでくださっている、お会いしたことのない読者のみなさまに感謝いたします。ありがとうございました。

 

2013年11月

藤木正三