闇に光が 平松良夫 牧師
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闇に光が
平松良夫
作家の柳田邦男さんは、次男の方を自殺で亡くしました。息子さんは、中学生の時に受けた目の傷とその治療によるショックが引き金になって、対人恐怖などを訴える神経症にかかったのだそうです。それから親子の長い葛藤が始まりました。
息子さんが自らいのちを絶つ前の月に、「もうだめだ。死に方を教えてくれ」と、その苦しさを訴えた時、柳田さんは、「わかった。ロープでも持って表に出ろ」と言ってしまったということです。「ものわかりのいい父親なんてやめた」と思った。それと同時に、良識をこわすことで突破口が見つかるのではないか、という気持ちもあったようです。
息子さんのことを振り返って、柳田さんはこう言っています。「『子供はいい学校に入って、親は親でいい仕事をして』みたいな理想郷でなければ、この世でまともに生きていけないなんてのは、大間違いです。いろんな失敗や過ちや矛盾をはらみながら、とにかく生きていくというのが、生身の人間だと思うんです」。(朝日新聞掲載記事「矛盾かかえ生きる それが人間」より)
その通りだと思います。しかし、たくさんの問題を抱えながら何とか生きている私たちが、耐えがたい困難な状況にあって、なおも希望を失わずに生きていくのには、どうしたらよいのでしょうか。
柳田さんの本の読者からの手紙に、「薄日のさした時期もありました。それを支えに生きていきます」とあったそうです。
「すべての人を照らすまことの光」(ヨハネ1章9節・口語訳)イエス・キリストが、どんなに深い闇の中をも私たちと共に歩んでくださいます。キリストを知っても、私たちの人生から問題がなくなるわけではありません。しかし、苦しみや悲しみに満ちた、このままの人生に、決して消えることのない希望の光がさし込むのです。
「闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた」(イザヤ書9章I節・新共同訳)