23 世界を7層構造で可視化する 本多 謙(2020/4/18) 人類の歴史を顧みればそれは戦いに満ちている。それは、平和な時代の人々の行為は繰返しが多く歴史家の執筆欲を刺激しないからなのかも知れないし、歴史家の著作や庶民が楽しむ劇や唄が戦乱に偏っているからかもしれない。いずれにしても戦争は我々の生活を変える大きな歴史的要素だ。宗教戦争にまつわる物語もその大きな部分を占める。近現代でも宗教戦争は絶えない。これは思想戦争と言い換えても良い。2020年の最大の戦争は米国を中心とする資本主義諸国と中国という共産主義国との経済戦争だが、これは自由主義国家と中華の復興を掲げる共産主義国の思想戦争でもある。これは第二次世界大戦のアーリア民族の復興を掲げる国家社会主義対米英の資本主義の構図に似ていなくもない。 これらの“宗教”戦争は経済戦争の面もあるが、それはさて置いて“思想”の相違による戦争でもあるという点を注視したい。筆者は、もし様々な思想に染まり自分の世界観が絶対だと思って互いに争っている人々に対して彼らの行為を相対的に認識できる様にすれば、世界の人々は自分の思考や行動を相対的に認識できるはずだ、と考えた。これが世界観を共有する手助けになり、その分世界を平和にできるのではないか、と考えた。その為には人類のあらゆる行為を可視化する一つの書式(template)が必要だ。ではどの様な書式があり得るかをについて間あげを巡らせ、その結果、人間の行為の成り立ちを階層構造で説明できるのではないか、と思い至った。 世界には、世界を階層構造で説明する神話がいくつもある。旧約聖書は神が天地を創造する話で始まっている。日本の神話でも先ず天があって下の曖昧模糊とした所から陸地ができる。天地は2層の階層構造だ。ダンテが神曲で世界を天獄、煉獄、地獄の階層構造として描き、僧源信が往生要集で地獄と極楽を説いたように、世界を階層構造で説明するという発想は昔からある。だがこれらの階層モデルはどれも現代には通用しない。そこで、筆者は国際標準化機構 (ISO: International Standard Organization) が制定した、「開放型システム間相互接続 (OSI: Open Systems Interconnection)」を応用することを思い付いた。これは異機種間のデータ通信機能を開発・利用する為のものだ。例えばスマホがインターネット環境でどう機能するかはこのモデルで説明できる。人間を1つの情報処理ユニットと考えればこのモデルは適用可能だ。事実、世界中のどの人間も1つの情報処理ユニットなのだ。 ISOのOSIモデルは以下のように通信機能を7層(layer)に分割して説明する。
上記の構造をスマホでアプリを利用した場合で示す。
上に述べる各層はその上下の層と以下に述べる関係を持つ。各層は下の層から信号を貰い、自分の層の機能を果たして必要な信号を作り、それを上の層に上げる。逆に、各層は上の層から信号を貰い、自分の層の機能を果たして必要な信号を作り、それを下の層に渡す。当然、第1層には下の層、第7層には上の層が無い。 このモデルを使って社会システムも説明できる。自動車を運転して荷物を目的地に運ぶ場合を例にこのモデルを説明する。
例えば、宅急便サービスは上記の7層が成立しないなら顧客の荷物を宛先に届けられない。そもそも自動車が無ければ自動車での移動が成立しないし、道路交通法や道路が無ければ自動車を社会で運用できない。上記の説明では層名はOSIのままだった。筆者は人間のあらゆる行為は事象をこの様な構造モデルで説明できる様に各層の名前を以下のように変更する。これは筆者の独走なので「本多の7層モデル」と呼んで頂きたい。 7層モデル
このモデルの各層の機能について以下説明する。 |