29 6層「サービス基盤」について

 

本多 謙(2020/5/16

 

抽象的に言えば、「サービス」は行為者が自身の為に、または被行為者の為に行う行為である。例えば自分が空腹を満たす為に行う“食べる”という行為は行為者が自身の為に行う行為であり、母親が子供に食事を提供するという行為は行為者が被行為者の為に行う行為である。母親が子供に食事を提供するという行為は第7層の「サービス行為」であり、これに対する第6層の「サービス基盤」は料理、食器、テーブル、椅子、部屋などになる。「サービス基盤」を構成する各要素は各々第1層から5層の上に成立している。

 

7層構造全体の説明の項ではスマホを使う例で7層を説明した。その中の第6層・プレゼンテーション層を「文字、画像、音声などをきちんと画面に表示できるようにする。」と説明した。これをもう少し詳しく語りたい。

 

スマホでは音声通話やメールやインターネットを使った色々なアプリを提供する。本稿ではこの様なアプリをサービスと呼ぶ。これらのサービスは第7層に属する。音声通話では通話アプリが電話番号簿や通話履歴を管理し、音声信号の入出力をする。この為には通話相手の名前と電話番号、通話履歴をデータ・ベースとして管理したりそれらを画面上で文字表示する能力、音声信号をアナログ・デジタル間で変換する能力が必要だ。これらは第6層・サービス基盤の機能に属し、一般にはAndroidiOS等のオペレーティングシステムやミドルウエアが提供する。メールはこれらの第6層の上で機能するアプリケーションだ。インターネットを使った色々なサービスは主にブラウザを通して提供される。ブラウザは第6層のサービス基盤に属し、ユーザはこれを通してインターネットサーフィンや天気予報や交通案内を利用する。

 

第7層のサービスの例として宅急便を挙げる。必然、第6層のサービス基盤は宅急便サービスを成立せしめる機能一般ということになる。宅急便を成立せしめる要素はいろいろある。配達員、運送車両、配達する貨物、配送情報を交換する情報システム、配送センター、道路網、道路交通法、交通システムだ。これら全てが宅急便サービスを成立せしめる第6層の「サービス基盤」であり、その各々の存在はそれぞれの第1層から第5層の積み上げの上に成立している。これを図示すれば以下の様になる。

 

例えば、運送車両は自転車、オートバイ、トラックなど種類がある。配送先や配送貨物の状況に(必要性、ニーズ)よって使い分けるが多くの場合トラックだ、トラックの長距離トラックや冷凍運搬車等がある。冷凍運搬車は冷凍食品を冷凍のまま届けて欲しいという市場ニーズがあるからだ。非冷凍運搬車では冷凍貨物は配送できない。大量の貨物を経済的に運送するには長距離トラックでなければならず、配送用の冷凍車は使えない。自動車という科学に対してそれをどの用途に使いたいかというニーズが適用され、冷凍車両の技術が開発されると宅急便というビジネスのパラダイムが新しく開け、そのサービスを効率的に運用する為に様々なルールが定められ、ここに至って宅急便の冷凍配送の為の運送車両が成立する。

 

鉛筆で文章を書く場合、その第7層の“書く”という行為の第1層は“紙”であり“鉛筆”である。文章を書く必要性(ニーズ)が無ければ人は文章を書かない。単なる気散じなのか、学校の宿題なのか、原稿料を稼ぐのか、手紙なのか、理由は様々だ。鉛筆を使いこなす技術も必要だ。5本の指が使いこなせなければ文章は書けない。斯くのが私信なのか学術論文なのか業務報告書なのか、など目的に応じで各々文章を構成するパラダイムが異なる。私信にだって拝啓や季語など様式は必要だ。様式はルールだ。文法もルールだ。これらは第5層に属する。

 

オリンピックの陸上で選手が100m競争を走る時、第7層は走るという行為で、第6層以下は、走りを成立させる環境(第6層)、競技ルール(第5層)、競技のパラダイム(第4層)、100mを走る技術(第3層)、競技に勝って名誉や賞金を得たいというニーズ(第2層)、競技場、トラック、シューズやウエア、選手の肉体(第1層)ということになる。