目   次

 

序 文    毛見昇

I

行きたくない所へ連れて行かれる

1 はじめに――“職業”と“生き方”

2 終生の主題――過剰な自意識・劣等感・虚栄心

3 「民衆の中へ」に破綻。教会へ

4 “生き方”を求めて神学部へ

5 私の説教

6 個教会にこもる

7 引退後の信仰の変化

8 おわりに 生涯一病人

II

野の花を思い、健気に生きる

 

わかってこそ福音

  イエスのバプテスマ

  野の獣といっしよ、御使いもいっしよ

  宣教の第一声

風は思いのままに吹く

III

宗教の心

信仰について――映画『ポー川のひかり』より

 

あとがき

 

序  文

 

 本書『生かされて生きる』が生まれたきっかけは、本年(2013年)7月末に藤木正三先生より届いたお便りにあります。そこには、「『真っ直ぐに創造を信じる』をもっと多くの方に読んでいただきたい。……その根拠はT姉のお便りです」とあり、そのお便りが添えられていました。

 その内容は、「重なり起こった困難の中で、常に持ち歩いている『真っ直ぐに創造を信じる』により日々支えられています」というものでした。

 藤木先生は、「実はこういう反応の便りは、今まで何人かの方からいただいており(もっと多くの方に読んでいただくために)、販売力を持つ出版社の力を借りたいと思い、『いのちのことば社』に協力をお願いしたい」と書いておられました。

 

 「真っ直ぐに創造を信じる」は、復活之キリスト穂高教会(長野県安曇野市)において語られた藤木正三先生の説教をまとめ、2009年3月に出版された小さな説教集です。

 

 37年前、私は、学生時代にいくつかの出会いが重なって、たまたま、当時藤木正三先生が牧師をしておられた京都御幸町教会の礼拝に連なる者とされ、その後教会の学生寮に入寮しました。そうしたご縁で、私が現在牧師をしている復活之キリスト穂高教会で七回説教をしていただきました。その説教をまとめたのが「真っ直ぐに創造を信じる」です。自費出版のような形で教会員中心にお分けしたのですが、思いがけず全国各地から今でも注文をいただきます。ありがたいことです。

 そういうわけで、気軽に持ち歩ける小さな説教集「真っ直ぐに創造を信じる」に若干の手を入れて再版し、もっと多くの方々にお届けし、困難の中にある方々に寄り添うものとして、少しでもお役に立てればと先生は願われたのです。

 このお便りを受け、いのちのことば社の長沢さんにご相談申し上げたところ、話は思わぬ方向へと向かいました。

 

私には、もし「真っ直ぐに創造を信じる」が再版されるなら、ぜひ組み入れていただきたい原稿がありました。それが本書のはじめに収められた「行きたくない所へ連れて行かれる」です。

 これは、ある牧師研修会で語られた講演録ですが、以前に「参考までに」と藤木先生からいただいたものでした。これを読み、私は、機会があればもっとたくさんの方に読んでいただくべき講演録だと思いました。そこには先生ご自身が言っておられるのですが(本書15頁)、「私のたどった六十年の信仰の変わった歩み」が「そのままお証し」されていたからです。先生の信仰や説教を知るうえで、これほどに貴重な資料はないだろうと直感しました。

 長沢さんもまたこの講演録にたいへん興味を持たれたようです。そして「真っ直ぐに創造を信じる」の再版については、この本自体完成されたものであり、これに手を加えて出すよりも、「六十年の信仰の変わった歩みをそのままお証し」した講演録を中心に、数編の説教とエッセイを組み合わせて、新しいものを出版したほうがより良いと判断されたのです。

 こうして本書が出版されることになりました。望外の喜びであります。

 

 藤木先生の聖書の説き明かしは、「自分に正直に、自分にしか通用しない、自分にしかわからないことを語る」ことにおいて「独特の響き」があります。しかしその「独特の響き」が、「だれにでもわかる、多くの人々に届く生きた言葉」を生じさせます。私もまたその「独特の響き」に触れて、砕かれ、慰められ、支えられてきた者の一人です。

 本書もまた、これを手にする方々に同じように働きかけ、苦労を負って生きていかざるを得ないお一人お一人の生にそっと寄り添って、なんらかのお役に立つものとなるであろうと確信しています。

 

  2013年11月24日 収穫感謝日に

              復活之キリスト穂高教会牧師 毛見昇